活動報告
学会参加報告 国際心理学会2024(ICP: International Congress of Psychology 2024)Volume 2
2024年7月にチェコのプラハで開催された、国際心理学会( International Congress of Psychology:以下ICP)で,研究発表をしてまいりました。ICPは,国際心理科学連合( International Union of Psychological Science)が 開催する会議で,1889 年の第 1 回から今回で第33回となる心理学分野で最も歴史のある国際会議です。4年に1度開催され,世界中の心理学者が集うため心理学会のお祭りともいわれています。
プラハに到着後,私たち(能智先生・沖潮先生・角南)は宿泊先から徒歩で学会会場に向かいました。会場までの町並みは,カラフルなメトロが行き来し,整然と区画整理されたパステルカラーに塗られた建物が立ち並んでいてとてもきれいでした。学会が開催された、「O₂ universum」は大きな会場でしたが,ポスター発表やシンポジウム発表の会場を行き来する間に,日本の知り合いの先生に何度かお目にかかりました。日本からも多くの先生方が参加され,本学会の規模の大きさを実感しました。
ICPは,世界中から様々なテーマを研究している心理学者が集い発表する場です。ポスター発表の合間に,関心のあるシンポジウム発表にも各自でいくつか参加しました。中には組織行動学の1つで,自分の意見や気持ちを安心して表現できる組織風土(「心理的安全性」)に関するテーマなどもありました。普段,書籍や論文でしか触れない内容について,最先端の研究として新たな視点から理解を深めることができ,とても参考になりました。
余談になりますが,次回の本学会は2028年7月にメルボルンで開催されることから,その宣伝として1つのブースに靴下が展示されていました(メルボルンの7月は冬なんですね)。私たち3人で,ブースに近づいてみるとカラフルな靴下の無料配布ということで,それぞれ記念に持ち帰りました。お揃いということもあり,学会の思い出の品となりました。もし,4年後に開催されるICPに参加できたら,ぜひ持っていきたいです。
私の発表テーマは,「発達障害児とのかかわりにおける教師の心理プロセス」でした。発達障害のある子どもは増加していますが,その特性のために教師の指示が通りにくく,授業の中で個別の教育ニーズが生じます。しかし,日本の教育現場では担任の先生が一斉授業を一人で行うことが多く,個別に支援をする物理的時間が取りにくい状況があります。そのような中,教師は1年を通してどのように発達障害傾向のある子どもを捉え関わっているのか,その特徴を明らかにした研究です。
国際学会での発表ということ前日から緊張していましたが,隣のブースの中国から来た研究者の方がいろいろ話しかけてくれて,お互いの研究内容を共有する過程で緊張が少しずつほぐれてきました。あなたの研究は特別支援教育に関するものですかと聞かれ,関連したインクルーシブ教育の内容であり,また教師研究であることを改めて見直すことができました。
別の研究者の方が来られたときに,ご自身の実証的な学校心理学研究の説明もしてくださり学びを得られただけでなく,私の研究がとても納得できるもので今後の発展を期待していると言ってくださいました。研究のお話を通して,私の教師研究を行う目的である”子どものために”教育現場に還元できる研究をという思いがより強くなり,これからの研究の後押しをしていただいたように感じました。
学会発表では,普段お目にかかれないような先生方と直接お話することができたり,いただいた質問から自身の研究を別の観点から見直したりできます。さらに今回は,チェコでの開催でしたので,普段と違う異空間のような素敵な体験も加わり,とても有意義な心に残る時間になりました。(写真下はポスター発表中の沖潮先生)