福知山市・伊根町と教育・研究交流連携協力協定の締結に関するメッセージ
福知山市・伊根町と教育・研究交流連携協力協定の締結によせて
東京大学大学院教育学研究科長 勝野 正章
東京大学大学院教育学研究科・附属心理教育相談室が、京都府 福知山市様・伊根町様との間で連携協力協定締結に至りましたことにつきまして、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
本研究科は、すでに能智正博教授をリーダーとする内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「語り合う学びあう特別支援教育スキリング・プロジェクト」のを中心に、福知山公立大学 北近畿地域連携機構との協働を始めさせていただいており、このたびの両自治体様との連携は、その中核を成すものです。
北近畿地域連携機構では、学校教育分野においても高大接続の枠組みのなかで探究学習やICTを活用した学びの充実を産・学・公の協働により推し進められてこられましたが、このたびの連携事業は、様々な不安や困難を抱える子どもたちの支援に尽力されている地域の教員の皆様を支援するものです。
ご案内のように、いま学校教育をめぐる状況は決してバラ色とは言えません。深刻な教員不足は、その一例です。
子どものウエルビーイングが保障されなくてはならないことはもちろんですが、そのためには、一人ひとりの児童・生徒をケアする教員が仲間と支え合い、生き生きと仕事ができる環境を整えなくてはなりません。
児童・生徒も教職員も、一人ひとりの尊厳が大切にされ、生き生きと学び、また仕事ができるよう、この連携事業を通じて、本研究科も尽力して参ります。関係する皆様に引き続きご協力を賜りながら、本連携事業を発展させていく所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
東京大学大学院教育学研究科との連携締結にあたってのごあいさつ
福知山市長 大橋一夫
国立大学法人東京大学大学院教育学研究科と福知山市が特別支援教育に関する教員のメンタルヘルス維持とスキル向上へ向けて連携協力協定を締結できましたことに厚く感謝申しあげます。
さて、我が国は少子化により、児童生徒の人数は、本市においても減少傾向にありますが、特別な支援を必要とする児童生徒の数は、年々増加の傾向にあります。
本市は、平成20年度より特別支援教育のグランドモデル地域として、関係部局ヒ連携し、特別支援教育の充実に力を入れてきた経過がございます。
そして、この度の連携協力協定を締結させていただくことにより、福知山公立大学北近畿地域連携機構に「学校組織レジリエンスユニット」が発足し、本市での学校実装を支援していただけることは心強いばかりです。
学校現場では、発達障害など障害のある児童生徒の対応方法が分からず、関係がこじれてしまう教員、自分が築き上げてきた今までの指導方法が通用せず悩んでしまう教員など、教員が直面する精神的な負担は、経験年数だけでは解決できない大きなものがあります。
報道等でも取り上げられているように、精神疾患により休職している教員は、全国で6500人以上となっており、過去最多となっております。精神疾患により休職とまではいかなくとも、精神的に負担を抱えている教員はさらに多いものと推察されます。そして、そのような悩みを抱えていても、気軽に相談できなかったり、相談できたとしても、実践に結び付く助言がすぐに得られなかったりすることも多くあるのが現状です。
このような状況の中、今回の連携協力協定によリ、まず「語り合い学び合う特別支援教育スキリング・プロジエク卜」を通して、オンラインにより教員の精神的負担が少しでも軽減できればと考えております。また、特別支援教育のスキルは、今後の学校教育を進めていく上で必要不可欠なものであり、そのスキルの向上は、本市の教育の推進に寄与するものであると確信しておリ、大いに期待しているヒころでございます。
結びにあたリ、今回、「臨床心理学の知見」と「バーチャル空間」を活用した本プロジェクトが、本市において展開されることにより、今後、多様性のある児童生徒の持てる力を伸ばす特別支援教育の充実と、教員の仕事のやりがい・働きがいにつながると共に、さらには、子どもたちや教員のウェルビーイングにつながっていくことを期待しまして、連携締結にあたってのごあいさつといたします。
今後とも、お世話になりますが、よろしくお願いいたします。
(提携式の様子。左から、廣田康男福知山市教育委員会教育長、大橋一夫福知山市長、勝野正章東京大学大学院教育学研究科長、高橋美保附属心理教育相談室長)
福知山市・伊根町と教育・研究交流連携協力協定に寄せて
伊根町長 吉本秀樹
教員のメンタルヘルス維持と特別支援教育スキル向上に関する連携協力協定を国立大学法人東京大学大学院教育学研究科様と結ぶ運びとなりましたこと、大変嬉しく思いますとともに、小規模自治体であります本町に研究協力のお声掛けを賜りましたことに対し、心より厚く御礼申し上げます。
さて、本事業は、「バーチャル空間を活用した特別支援教育に特化した教員職能開発」の研究プロジェクトとお聞きしております。特別な支援を要する児童生徒、また、当該保護者への対応に困難さを抱えている一般教職員や学校に対して、臨床心理の観点から、オンラインを中心としたカウンセリングを実施していただく本プロジェクトは、当町の学校、教職員にとって大変有意義な事業であると考えております。
現下、全国的に不登校児童生徒の増加、いじめ問題の深刻化、SNSを介した不適切な行為、児童虐待、教職員の長時間勤務等々のような教育的課題がクローズアップされておりますが、当町も、ご多分に漏れず、同様の課題が見え隠れしております。
従来、伊根町では地域住民と学校教職員が一体となって、地域の宝である子どもたちを伸び伸びと健やかに育んで参りましたが、ここ数年の間に、教職員の早期退職者、また、年度途中の離職者が出ております。豊かな自然に恵まれ、とてものどかな町の小さな学校でも、そのような状況にあることは誠に残念に感じるところでありますし、同時に、教職員の皆さんがなされている、日々の大変なご苦労も想像に難くないところであります。
本町の1中学校、2小学校の教職員が、この職能開発の機会を有効に活用させていただき、特別支援教育に関する様々な知見を広げ、また、確かなスキルを身に付けることで児童生徒・保護者と今以上の信頼関係を構築していくための1つの拠り所となることを期待している次第であります。
結びに研究開発責任者能智正博様、プロジェクト・マネージャー石島照代様をはじめ、本プロジェクトに関わられる全ての皆様に、心より感謝申し上げまして、甚だ簡単措辞でございますが、ご挨拶とさせていただきます。
(提携式の様子。左から吉本秀樹伊根町長、勝野正章東京大学大学院教育学研究科長)