シンポジウム

語り合い学び合いつながり合う自治体教創コンソーシアム 設立準備会発足発表会リポート Part.2

 第二部は、東大能智チームの石島照代統括プロジェクト・マネージャー(PM)による、能智チームの現在の進捗状況とコンソーシアムの趣旨説明から始まりました。
 石島統括PMは、東大能智チームの取り組みが北近畿地域の多大なる協力のもとで3年目を迎えたことに触れ、関係者の皆様に感謝しつつ、教育現場で日々奮闘する教員を支える活動の意義について語りました。先生方が抱える悩みや苦労を、まずは「カジュアルに愚痴を言える」場として受け止めることから始め、教員の労働環境の改善や、生徒指導力の向上につながる支援を行ってきたと説明しました。

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 また、北近畿地域の教育環境について、「非常に恵まれた素地がある」と評価しました。東京大学教育学研究科と福知山市、伊根町との教育・研究交流連携協力協定に加え、福知山公立大学と京都府北部自治体との連携の蓄積があったからこそ、自治体が集い、コンソーシアムという形で「みんなで学び合う」取り組みを進めることができたと振り返りました。

 今回のコンソーシアムの目的については、教育を国のトップダウン施策として受け取るのではなく、各自治体が教育を「自分たち自身の課題」として捉え直すことにあると強調しました。自治体自らがボトムアップで独自の問いを立て、「教育という営み」を通じて人口減少をはじめとする社会課題の解決を目指していく。そのプロセスを、東京大学や福知山公立大学に加え、室蘭工業大学、北陸先端科学技術大学院大学など、ポストコロナSIPで連携する高等教育機関が支援していく体制であると説明しました。

 一方で、その実現には「資金」が不可欠であることにも言及しました。教育施策に関する資金調達は非常に難しく、大学、自治体、研究開発、教育のいずれの分野においても共通する課題であると、研究開発費のファンドレイジングにも携わる立場から指摘しました。

 具体例として、GIGAスクール端末の更新費用を挙げ、多くの自治体が対応に苦慮したことを紹介しました。その難しさの一因として、教育の重要性は誰もが理解している一方で、なぜその施策に投資する必要があるのかをアウトカムベースで説明することが難しいことがあると述べました。その上で、教育施策への投資をどのように呼び込み、持続可能な形にしていくかについて、北近畿地域や北海道伊達市の自治体とともに考えていきたいと、今後への意欲を示しました。

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 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム第3期ポスコロSIPの運営受託元である、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の 村上絵莉氏は、本事業(SIP)の特徴は、単に新たな技術を生み出すことにとどまらず、研究成果を教育や社会の現場で実際に活用しながら社会を動かし、持続可能な仕組みとして社会実装を進めていく点にあると述べました。

 その上で、SIPの期間内に得られた成果を一過性のものに終わらせず、レガシーとして未来へつないでいくことが重要なポイントであると強調しました。SIPを通じて蓄積された実践知や人と人とのネットワークを社会の財産として継承し、社会の進歩に貢献していくことこそが、コンソーシアムの真の意義であると語りました。さらに、コンソーシアムが新たな出会いや「教創」を生み出し、地域で芽生え始めた変化が他地域へと広がり、日本全体の未来を形づくっていく一助となることへの期待を込めました。

 色紙には「一人ひとりの可能性を引き出し ともに花開かせること」と記しました。教育を意味する「education」という言葉を辞書で調べた際に、「引き出す」「雇い育てる」という二つの意味があることを知り、とりわけ「引き出す」という言葉に教育の本質を感じたといいます。一方的に知識を教え込むのではなく、一人ひとりの成長に寄り添い、内に秘めた可能性の芽を開かせていくことが教育であると、その思いを伝えました。

 さらに、東京大学能智プロジェクトはすでに、京都府福知山市・与謝郡伊根町で先行して活動しています。伊根町教育長の岩佐好正氏は、教育を「信頼のシンフォニー」と表現しました。教育とは、教師、子ども、保護者、地域といった多様な立場の信頼が重なり合い、響き合いながら進んでいく営みであると語りました。

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 伊根町では、教員の離職という課題を背景に、特別支援教育を柱とした教員支援の仕組みづくりに取り組んできました。第三者だからこそ話せる相談の場や、オンラインによる支援が教員の安心感につながっているとし、今後は教員同士がつながり合う取り組みを通じて、町全体に信頼の輪を広げていきたいと述べました。

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